■AMPSは他のADL/IADL評価法と何が違うの?
□AMPSは他の評価法と比べて様々な長所を持っていますが、特に他の評価法と違う点としてあげられるのは、 AMPSは対象者のADL/IADL課題遂行の"質"を評価する唯一の標準化された評価法ということです。 作業療法士は歴史的に、技能評価と作業分析による作業の質の評価を得意としていますが、 AMPSではその技能による作業分析的評価が標準化された形で可能なのです。 作業遂行中の目的指向的行為(つまり運動技能とプロセス技能項目)ごとの身体的努力の増大、効率性の低下、安全性の低下、 あるいは自立の低下という側面を採点時に考慮に入れています。 AMPSは標準化されているので、客観的な結果として文書化したり、作業療法の介入効果として用いることができます。 その他は特徴として書かれているAMPSの長所と短所をお読みください。
■AMPSは対象者が課題を選択できるとのことだが、具体的にどのような課題があるのか?日本人に馴染みのある課題はあるのか?
□AMPSには現在125課題(第8版)あります。具体的には、服を着替える、歯を磨く、箸で食事をするといったADL課題と、 洗濯物をたたむ、掃除機をかける、インスタントラーメンをつくる、チャーハンをつくる、コーヒーまたはお茶をいれる、 植物の水やりをする、草抜きをする、ペットのえさをやるなどのIADL課題があります。 AMPSは他の評価法と違って、評価法の信頼性を保ちながら、今後も課題を増やしていくことが可能な評価法でもあります。 香港や日本で講習会をスタートすることをきっかけに、6版ではチャーハンをつくる、インスタントラーメンをつくるという課題などが 導入されました。第7版では、味噌汁をつくる、布団を敷くという日本特有の課題も入りました。 今後も、日本でAMPSが盛んに使用し、「こんな課題があると使いやすい」という声を大にすれば、 より日本人に馴染みのある課題が増える可能性が高くなります。 日本の作業療法士がAMPSが良い評価法として今後使用していくかどうかが、日本人に馴染みのある課題が増えるかどうかにかかっているのです。 ある意味でAMPSは使用者が皆で育てていくタイプの評価法なのです。
■AMPSは人間作業モデルをその基盤として開発されたと聞きました。AMPSを受講する前に人間作業モデルの勉強が必要なのでしょうか?
□人間作業モデルの勉強をしないと、AMPSを受講できない、使用できないといったことは全くありません。 AMPSが作業療法の理論である人間作業モデルをその基盤の1つとして考慮し開発された経緯があるということは、 人間作業モデルを勉強しないとAMPSを理解できないということではなく、AMPSは、作業療法士がその実践の中で、 これまで重要視してきた、「対象者の作業遂行に対する意志」、「対象者の習慣」、「作業を遂行するのに必要な技能」、 「人と作業と環境との相互作用」あるいは「作業経験」という作業療法の視点を取り入れて開発されているということを 示しているということなのです。AMPSには作業療法的視点が評価法に含まれているので、例えば、対象者中心の作業療法の実践や、 人間作業モデルだけでなく他の作業療法の理論や実践モデルの中でAMPSを使用することは何かひずみや抵抗を生むことはありません。
■School AMPSという子供の学校生活を支援するための評価法があると聞きました。 どんな評価法なのか知りたいです。日本でも講習会は開催されていますか?
□School AMPSは、学校版のAMPSです。子供がいつもいる教室の中で、通常教室で行われるように教師が、 通常行っている課題を提示し、それを子供が遂行しているところを観察して評価します。そのため、子供の教室での問題を明らかにし、 解決するための介入指針が具体的に得られやすいという実践的利点があります。また、これまでの学校に関する評価法と異なり、 間隔尺度で能力測定値が算出されるため、先生や親など客観的指標を提示できるうえ、研究に使用する際にも、統計処理に有利です。 健康な子供との比較は、3歳から12歳まで可能です。School AMPSは、AMPS同様、 運動機能や認知機能を測定するものではありません。あくまでも、教室で遂行することを期待されている課題とその教室の環境 (教師やクラスメートを含む)およびその子供の相互作用から生み出される、教室での子供の遂行技能能力を測定するものです。
また,2012年5月に日本人講師が誕生しましたので,今後は日本語での講習会が開催される予定です。
■ESIという社会交流技能の評価法があると聞きました。どんな評価法であるのか知りたいです。日本でも講習会は開催されていますか?
□ はい、日本でも開催されています。ESIはAMPS同様にクライアントの社会交流技能を観察評価し、 能力測定値を間隔尺度で出すことが出来ます。対象者となる人は、AMPS同様に、子どもから大人まで、疾患を問いません。 どのような技能項目があるかについては、「作業療法学全書改訂第3版,作業療法技術学3日常生活活動,協同医書出版社,2009、 p66表3.15」を参照ください。日本人への信頼性・妥当性については、これから吟味されることになります。 講習会に参加することで、参加者は、少なくとも社会交流技能の幅広い視点と観察評価技術、 効率の良い記録方法を身につけることが出来るでしょう。 AMPSの最新情報満載のAMPS本部ともいえるアメリカAMPSプロジェクトの ホームページも興味のある方や英語が得意な方は是非ご覧ください(Link集をご参照下さい)。
■AMPSに関する質問などはどこにすればよいのでしょうか?
□講習会およびAMPSに関する疑問やご質問は大歓迎です。下記までご連絡ください。 お返事が遅くなる場合もありますが、ご了承下さい。
日本AMPS研究会 代表 齋藤さわ子